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【ドクター長尾のオトナのための死の授業】

先日、長尾クリニック院長・長尾和宏先生にお話を伺って来ました。 
 

日本尊厳死協会・副理事長も務めていらっしゃる長尾先生は、『死の授業』をはじめ、さまざまな『死』についての本を出版されたり、全国で講演をされたりしています。 
インタビューをさせて頂いた日も、『ドクター長尾のオトナのための死の授業』という講演の為に東京にいらっしゃっていました。
お忙しいところを快くご了承いただき、講演までのお時間を割いてお話を聞かせて下さいました。  

長尾先生の最近の活動としては、『死』について中学生と一緒に考えていらっしゃったそうです。
「中学生だって絶対に死ぬでしょ」と長尾先生は仰います。
「ガンだったらガンになった人だけ、病気だったら病気になった人しか関係ないけど、死ぬってことは全員に関係がある。生きている限り、致死率は100 パーセントだから。 」

「『人生会議』ってこの前名前が決まったでしょ?あれ?知らない?何にも知らないんだなぁ(笑)」   
 

自らが望む人生の最終段階における医療・ケアについて、前もって考え、医療・ケアチーム等と繰り返し話し合い共有する取組を『アドバンス・ケア・プランニング(ACP)』と呼ぶそうです。
(※ 2018 年11 月30 日、厚生労働省が募集していたACPの愛称が『人生会議』に決まりました。)

『死』についての議論はタブーとされる事が多く、特に『安楽死』の議論は人殺しの議論と言われ、海外で行われる会議では反対派からの攻撃に備えて警察の護衛がつくそうです。 
長尾先生ご自身も、人口呼吸器をつけた子供に「人殺し!」と言われた事があるのだと話してくれました。 
世界の中でも日本は特に『死』について話す事が難しい国で、『安楽死』の問題は議論にすらならないそうです。 

 

「世界で行われている安楽死の議論というのは、水泳で5 キロ泳ぎましょう、という議論なんですよ。それなのに、5 メートルも泳げない、それが日本なんです。」 

「僕ら、劇団やってるんですよ。」   
 

長尾先生はパソコンで公演映像を見せてくださいました。     

劇団ザイタク   
第1 回公演”ピンピンコロリって無理なん知っとう?”   
第2 回公演”おひとり様でも、自分の家でピンピンコロリできるねんで!”   

 

「最初、『劇団死期』ってつけようとしたんですよ。そしらた怒られた(笑)」  

 

長尾先生をはじめ、医師会長さん、ドクター、ヘルパーさんなど、医療関係の方々が集まって劇団を作り、在宅医療について考える作品を作っているそうです。この作品は長尾先生のオフィシャルサイトで見る事が出来ます。(http://www.drnagao.com

昔は、亡くなる時は自宅というのが普通でしたが、今は病院で亡くなる方が多くなりました。
 在宅で亡くなる方の半分は、病院に連れて行ってくれる人がそばに居なかった人、いわゆる「孤独死」なのだそうです。 
世の中には大勢の人がいて、それぞれの考え方を持って生活しています。 
どのように生活していくか、生きていくかの選択が人それぞれ違うように、どのように死んでいくか、その考えや選択も人それぞれ違うはずです。 

 

長尾先生は仰います。
「死ぬことは、生きることだから。死と生は表裏一体の関係にあるんだよ」   

 

自分の『生き方』を選択出来るのと同じように、自分の『死に方』を選択する事が出来る。 
そんな普通に聞こえそうな事が、全く普通じゃないのが今の世の中なのだと、改めて実感しました。

お話を伺ったあとは、『ドクター長尾のオトナのための死の授業』をとても楽しく拝聴させていただきました。
 

長尾先生、どうもありがとうございました!

中村早香

さやかアイコン小.png

長尾先生に伺って興味深かったのは、台湾(日本と同じく超高齢化社会)では「自宅で死を迎える」という慣習があって、死の兆候が見えてから急いで家へ搬送したり、何なら既に死んでいたとしてもまだ生きている!として自宅で死亡確認をする「ギリギリ在宅死」も多いということです。


死んだ場所に魂が残ってしまうという思想から生まれた慣習だそうですが、どう最期を迎えるかにこだわって考えない限り生まれない文化だと思いました。


もしかしたら歴史の流れの中で、終戦して豊かな時代到来!生きているだけで幸せ!と、日本は「理想の最期」について考えることがネガティブだと感じる風潮になってしまっているのではないのでしょうか。

 

また人との繋がりが希薄になりがちな昨今、孤独死が増えているそうで、ゲストでノンフィクションライターの菅野久美子さんが孤独死された方の家のクリーニングの際に撮影された写真などを見せてくださいました。
高齢者だけではなく離婚して独身になった中年男性などにも孤独死は多いらしく、部屋に家族との写真が、庭には子供のための遊具が残されているものなどがありました。

 

死と向き合って「理想の最期」について考えること、そしてそれを家族や身内ではない誰かと共有するコミュニティなどを作り、その場で人と人とが新たな形で繋がれるようになったら、孤独死も減少させられるポジティブな活動として捉えることが出来るのではないかと思いました。

 

同じくゲストで生物学者の池田清彦さんは、内閣府の調査で2060年には日本の平均寿命が男性84歳・女性90歳になることが発表されたけれど、医療が発達して治せる病気が増えたとしても認知症の治療は難しく、現在90歳以上の60%が認知症になることから、認知症人口がどんどん増えていき、人手不足に陥ることは目に見えていると仰っていました。
 

日本の将来を見据えた際に、これから「理想の最期」を考える活動が広まっていき、死に方の多様性が受け入れられたら、今回の公演の物語に登場するような安楽死特区なるものが、いずれ認められる可能性も大いにあるということを感じ、作品創作に向かう気持ちが一層引き締まりました。

大塚由祈子

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